今日は1922年生まれのヴァイオリニスト、マエストロ・イヴリー・ギトリスにお越しいただいています。
さっそく楽屋をノックしてみましょう。
※本文は、2010年に行ったリサイタルに際して、イヴリー・ギトリスとマネージャーとの電話での実際の会話をもとに再構成したものです。
-(国際電話にて)ハロー・マエストロ・ギトリス。お元気ですか?
「おう、マイ・マネージャー。元気だよ。」
-お元気そうで何よりです。日本ツアーも近づいてきたので、そろそろ曲目を発表したいのですが。
「そうだったな。うーん、フランクのソナタが聴きたいって?よし。あとはヒンデミットのソナタにしよう。二楽章で、E♭メジャーのやつだ。最初はヒンデミット。次はフランク。」
-ヒンデミットとフランク!意欲的なプログラムですね。確かに、フランクはこちらから希望したのですが、ヒンデミットはどうして?
「どうしてって?ダメなのか??」
-そんなことありません!素晴らしい選曲だと思います。マエストロが敢えてヒンデミットを選んだのはなぜかと思いまして。
「なぜって、いい曲だからじゃないか。冒頭のピン・ポピン・ポピン!のメロディなんか本当にいいだろ?なぁ。(嬉しそうに)ピン・ポピン・ポピン…。」
-はい。でもフランクとの相性とか、それか、昨年のリサイタルでヘンデル、モーツァルト、ベートーヴェンのソナタを弾いたので今回は近現代のものを採りあげたのか、とか、、。
「そんなの関係無い。ただいい曲だから弾くんだ。それで充分だろ?弾きたいものをやったほうがお客さんが喜んでくれるんじゃないか?」
-そうですね。その通りだと思います。
「だろ?ヒンデミットのソナタは本当にいい曲だ。ピン・ポピン・ポピン…。ハッハッハ!」
-本当に楽しみです。後半はどうされますか?
「小品集にするつもりだけど、曲目は、やはりその時に本当に弾きたいと感じる曲にしたいと思っているんだ。今すぐには決められないから、舞台上でお客さんにアナウンスするよ。今のところ、冒頭にマルディロシアンのピアノソロ。クライスラーの小品。後は、ミシェル・ルグラン。知っているか?」
-ルグランって、「シェルブールの雨傘」とかの映画音楽で有名なあのルグランですか?
「そうだ。ピアニストで映画監督でもあるルグランだ。親しくってね。今回の日本ツアーのために”6つのロマンス(Six Romancies)”っていうヴァイオリンとピアノのための小品を作曲してくれたよ。」
-ということは、初演になるんですか?
「そう、世界初演。短い作品だが愛らしくてとてもいい曲だよ。大好きな日本で発表できるのはとても楽しみだ。」
-何と!すごいですね!!今回のリサイタルも本当に盛りだくさんで、本当に楽しみになってきました。
「おっと、今日からスイスのツアーが始まるんだ。忙しくてな、来週まで連絡が取りづらくなるから、そのつもりで。プログラムのことはそういうことで発表しておいてくれ」
-かしこまりました。スイスの演奏旅行を楽しんできて下さいね!
「チャオ!バイ、マイ・マネージャー。」
〈プログラム〉
前半
ヒンデミット/ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品11-1
フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
***
後半
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴」(ソロ: ヴァハン・マルディロシアン)
ミシェル・ルグラン/6つのロマンス(世界初演)
クライスラー小品集
ほか(当日舞台上で発表)